3月, 2016年

93回春陽展 「帰去来」(仮題)制作過程

2016-03-01

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2/16 パネル完成 273cm×350cm

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study 1 コットン紙に木炭

 

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study 2 コットン紙に木炭

 

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study 3 コットン紙に木炭、パステル

 

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study 4 コットン紙に木炭、パステル

 

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2月26日 木炭による下描き

 

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2月28日下図完成

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3月1日 下塗り開始

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3月3日 全体の構想に従って下塗りを開始する。

 

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3月5日 植物イメージを優先して制作を進める。

 

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3月9日 空の色をヴァーミリオンとするため一挙に空を塗り込める。

 

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3月14日 細部にこだわりながら制作を進める。クロスハッチングを多用してディテールの
密度感を追求する。今までにあまり使っていない赤系統の色彩を追求する。
(ライトレッド・新しいカーマインを使用)

 

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3月19日 描き進める中で様々な試行錯誤の中での発見があり新たな楽しみを見出す。

 

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3月26日 今までになく光を意識したために明暗が重要なモチーフとなり顔の表現に苦労する。

 

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3月29日 完成に近づきつつありこまごまとした細部のアイデアが登場する。
最下部の放置していた静物に子供のおもちゃを描き込むことにした。煙をはく青色のロボット、
ブリキのハーレーダビットソンや対になったバイク、舟などである。
登場する者たちは私の朱色の世界の中で対になることを求められる。手前から奥へ
奥から手前へ交互に行き来しながら「帰去来」を実現して行く。

 

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3月31日「帰去来」一応の完成
「帰去来の辞」は、陶淵明の詩、「帰去来兮」を「かへりなんいざ」と訳したの
は菅原道真だがこの絵を構想した時にこの言葉から始めた。しかしながら初期衝
動はある日学校からの帰りの電車、西の空が見事に焼けていてふと見ると誰もが
西の空に顔を向け呆然と眺めていた、その刹那に浮かんだ言葉がこれであった。
そんな訳で僕の絵では本来の詩の内容からは大きく逸脱、時に丘を越えてカヤック
を運んだというネイティブアメリカンの話(バイダルカ)をベースに様々な記憶や
引用を埋め込みながら自由に作画した。

 

93回春陽展 展賞委員会報告(文責 小林裕児) 

4月12日第93回春陽展会場において展示終了後中川一政賞、岡鹿之助賞、損保ジャパン
美術財団奨励賞の審査が会に選任された審査員により行われました。

選考委員は絵画部(東 直樹、入江観、大石洋二郎、小林裕児、武田百合子、三浦明範)
版画部(大久保澄子、柴田昌一、清水美三子、渡辺達正)

中川賞、岡賞については投票により、損保ジャパン賞については話し合いの上決定されました。

 

畠山昌子氏 中川一政賞授賞理由

19世紀後半西洋絵画に印象派が出現して以来生活空間の中の『光』はプリズムを通して分光され、
散光され光はゲーテやニュートンのいわば『科学』の光になりました。画家達はこれを前提に様々な
問題意識のもとで光や色彩に思考を巡らし多様な絵画を生み出してきました。まさに百花撩乱、
絵画造形上の課題はすべて汲み尽くされたかのようにも見受けられます。
しかし、と畠山昌子氏は考えたに違いありません、あるいはある時偶然出会って発見したそのかも
知れません、光の射すほうを見上げてみると木漏れ日の隙間に光と陰のえもいわれぬ詩的ともいえる
リズムがありそれは自身の絵画世界に取り込む事が出来るに違いないと。
畠山氏の絵画世界には元々独自の魅力ある超密なテクスチュアを持つ画面がありました、そこに分光
されない光の実在としての白光と焦点を曖昧にされた葉陰を思わせる緑土色による緊張感に満ちた
絵画世界が展開されるようになりました。
春陽展を始め個展などで展開された作品は会の内外から高く評価されて来ました、しかしそこに留まらず
近年視線を水平方向に落とし遠い光源から浅く反射する光の包囲の実相が作り出す奥行きの表現に
たどり着いて来ました。ちょうど河原で平らな石を見つけ光に向かいツツツと水切りが成功しているその
先から光がある実体として逆照射してくるような爽快さでしょうか、何処までも転がる石はいつの間にか
光の中に吸い込まれ白光となって返って来るのです。

今年の春陽展では更に横長の画面一杯に水、光、森の深く淡いこの惑星という思いを込めた絵画世界が
印象派からの呪縛を超えた高い次元の完成度を持って低く静かに観る者に迫ります。

選考委員会は畠山昌子氏の出品作『on the planet 2016-01』を第93回春陽展中川一政賞といたしました。

 

川野美華氏 第93回春陽展 損保ジャパン美術財団奨励賞授賞理由

出品作「賢い乙女と愚かな乙女」S100号 油彩

第2次世界大戦後、未曾有の惨劇を経て抽象表現主義をはじめとしたさまざまな表現主義的芸術運動が
同時多発的に世界中で顕われました。

各人主義を標榜する春陽会でも例外ではなくさまざまな実験的な表現が試された歴史があります。
しかし近年では各々の造形思考に基づく表現の中で徐々に自己形成してゆく作風が主流になってきているように
見受けられます。

そのような中で突如強烈な表現を引っさげ川野美華氏が現れました、穏やかな中間的暖色の平面構成の中に
突如現れる異形のもの達は一体何を語っているのでしょうか。苦いユーモアを持った阿部公房やサミュエルベケット
の登場人物のように川野美華氏の不可解な登場人物達は私達にさまざまな思いを投げかけます。

平面芸術の新たな地平に向け初期衝動と人間表現という創作の原点を強く胚胎したこの作家の今後の展開に大きな
期待を込めこの賞を授与しました。

 

 

 

 

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