宮沢賢治「土神と狐」に寄せて 2016/9/13
私の家は小さな谷地の奥の小高い所にあって、窓から眺めると、左には森の入り口がこんもり
とした暗がりをのぞかせ、正面にはその森から流れ出た水を貯めた小さな池があります。
右には何枚かの谷田が続き、すっかり木の葉の落ちた季節だけ木々の間から遠くに一軒の
農家を見とめることが出来ます。
「土神と狐」の冒頭を読むと、あまりに我家と似た風景に驚かされます。
一本の美しい樺の木をめぐる土神と狐の葛藤の物語は、深い森の中が舞台ではありません。
木こりが山へと向かう道筋、練兵場のパチパチという鉄砲の音が聞こえてくるような人里の近くなのです。
私はよく森の入り口を通って裏手の小さな山のいただきまで往復します。
森に入り森から出てくる時、なぜか不思議な感覚に襲われます。それは異界から人間世界へと
入代わる境界を通るといった感覚でしょうか。
「森の入り口」で繰り広げられる異界の物語、そのあまりの人間臭さに境界の持つ不思議な力の存在
を感じないではいられません。
「土神と狐」のパフォーマンスは4回目の再演となります。いつも私の絵とかかわりながら公演しています
が、公演の度に深まりを見せ、自身の絵画表現にも少し変化が起こっているようです。
今回もあらたな挑戦がありとても楽しみです。
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