2015 92th.春陽展小林裕児「地底湖」(仮題)制作過程
2/18
ポーランド、クラコウ郊外ヴィエルチリの塩鉱山を2013年夏に訪問したのがきっかけで
地底の大空間にひかれ昨年の「よみがえりの木」に続き「地底湖」という場の設定から始めた、
かなり試行的なスタディをスケッチブックで重ね構想を確定、画面上で木炭により大まかな構図
を決めた。
2/20
下塗り開始、現在は6等分パネルをボルトで繋ぎ、μグラウンド12回塗り下地を使用している。
2/27
大体の制作プロセスを固め土製顔料での下塗り終了。
3/1
テンペラ+油彩の混合技法のメソッドに従い制作開始。
3/7・3/12
絵面が見えてきた、同時に解決しなければならない問題点も幾つか浮かび上がってきた。
一つは暗い部分をマルーンに設定したために明暗の閾の幅が狭くなり、壁に構築した捏ねものの
質がスムーズに暗部にフェードして行かない、空気が感じられなくなりそうだ。
もう一つはモティーフの問題で登場する人や動物を対にしてあらわすことが出来きていないために
画面の中に隙間のようなものが出来てしまった。
3/16
空間の密度を増すために画面の手前、鑑賞者の後方にも木がある設定にしてみた、
すなわちこの絵を見る人は樹冠の下にいることになる。
木の隙間が出来る事で奥行の感覚が少し出てきたようだ。
3/19
アトリエの窓外でミモザが咲いた。花をアトリエに持ち込み画面にも描き入れてみた、
「場の感覚」が包み込むのが嬉しい。
3/20
「対」を意識して人物を何人か描き加えることにした。
全体のキーは「シェルター」「地底の湖」「対になった」「光」「梯子の暗喩」「縛られた―解放され
た木々」・・・・
3/30、4/1
一応の完成、上昇と下降、奥から手前に、小津にならって中心に向かって人工空間の中、
低い視点とぎゅっと詰まった人物配置を試みたのだがどうだろうか、マルーン、カーマイン、
オレンジからネイプルスイエローへの暖かな色の流れは囲い込まれた水やわずかに覗いた
空の寒色との緊張した引き合いをそれなりに演じてくれただろうか、広い美術館の空気の中で
確かめたいと思っている。
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